犬の下痢は様子見でいい?受診した方がよいサイン

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犬の下痢は様子見でいい?受診した方がよいサイン

犬の下痢は、診察でもかなり多いご相談のひとつです。

 

「元気はあるけど、便だけゆるい」
「昨日の夜から急に下痢をした」
「少し血が混じっている気がする」
「何回もトイレに行くけど、食欲はある」

 

こういったご相談は日常的によくあります。

 

実際、軽い胃腸炎や食事の影響で、数日以内に落ち着く下痢もあります。


一方で、同じ下痢でも、早めに検査や治療をした方がよいケースもあります。

診察でまず見るのは、便の状態だけではありません。


元気はあるか、食欲はあるか、吐いていないか、血便はないか、年齢はいくつか、体重が

落ちていないか。このあたりを組み合わせて判断します。

 

下痢は「便がゆるいかどうか」だけで重症度を決める症状ではありません。

 

〇 まず大事なのは、元気と食欲です

下痢をしていても、元気があり、食欲もあり、嘔吐がなく、便が少しゆるい程度であれば、軽い胃腸炎として経過を見ることもあります。

 

例えば、食べ慣れないおやつを食べた、フードを変えた、拾い食いをしたかもしれない、トリミングや来客などで少しストレスがあった、季節の変わり目でお腹を崩した、というような内容は実際の診察でもよく聞きます。

 

ただし、元気そうに見えても、何度も水のような下痢をする、血が混じる、下痢が数日続く、体重が落ちている、という場合は注意が必要です。特に子犬や高齢犬では、軽く見える下痢でも体力を落としやすいので、早めに確認した方が安心です。

 

〇 少し様子を見てもよさそうな下痢

以下のような場合は、短時間であれば経過を見ることもあります。

 

・元気がある
・食欲がある
・嘔吐がない
・下痢は12回程度
・血便ではない
・ぐったりしていない
・子犬や高齢犬ではない
・持病がない

 

この場合でも、便の回数、色、食欲、嘔吐の有無はよく見てください。
便の写真を撮っておくと、診察時にかなり参考になります。

 

反対に、人間用の下痢止めを自己判断で飲ませるのは避けてください。
原因によっては、無理に下痢を止めない方がよいこともあります。

 

〇 早めに受診した方がよいサイン

次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。

 

・血便がある
・黒っぽい便が出る
・嘔吐もある
・食欲が落ちている
・元気がない
・水のような下痢を何度もする
・便にゼリー状の粘液が多い
・お腹を痛そうにしている
・体重が減っている
・子犬、高齢犬、持病がある
・下痢が23日以上続いている

 

この中で、飼い主さんが判断しにくいのが「お腹を痛そうにしている」というサインです。

犬の場合、腹痛があると、前足を伸ばして胸を床に近づけ、お尻だけを上げる姿勢をとることがあります。

 

いわゆる「祈りのポーズ」と呼ばれる姿勢です。もちろん、単に伸びをしているだけのこともあります。ただ、何度もこの姿勢をとる、落ち着かない、震える、吐く、食べない、下痢をしている、といった症状が一緒にある場合は、腹痛のサインとして注意します。また、胃腸炎、膵炎、異物、強いガス貯留などで見られることがあります。


ただし、この姿勢だけで病名が決まるわけではありません。

全身状態や検査とあわせて判断します。

 

〇 血便は少量でも注意します

「少し血がついているだけなので大丈夫ですか?」
というご相談もよくあります。

 

少量の鮮血だけで、元気や食欲がしっかりある場合は、大腸炎などで比較的軽く済むこともあります。ただし、血便を繰り返す、便が水っぽい、嘔吐がある、元気がない、食欲がない場合は早めに診た方がよいです。

 

また、黒っぽい便は、胃や小腸など上部消化管からの出血が関係することもあります。
赤い血よりも分かりにくいですが、黒色便は軽く見ない方がよい便です。

 

〇 下痢の原因はひとつではありません

犬の下痢で多い原因には、食事の影響、腸内環境の乱れ、ストレス、寄生虫、細菌性腸炎などがあります。一方で、単なる胃腸炎に見えても、膵炎、異物、アレルギー性腸炎、炎症性腸疾患、蛋白漏出性腸症などが隠れていることもあります。

 

診察では、「下痢だから整腸剤だけでよい」と最初から決めるのではなく、全身状態と経過を見ながら、どこまで検査が必要かを判断しています。

 

〇 診察で確認していること

下痢で来院された場合、診察では次のようなことを確認します。

 

・いつから下痢をしているか
・何回くらい下痢をしているか
・便の色は茶色か、赤いか、黒いか
・ゼリー状の粘液があるか
・嘔吐があるか
・元気や食欲はあるか
・フードやおやつを変えていないか
・拾い食いや誤食の可能性がないか
・体重が落ちていないか
・同居の動物にも症状がないか

 

便を持参していただくか、写真を見せていただけると、診断の助けになります。
特に、血便や粘液便は、実物や写真があると状態を把握しやすいです。

 

〇 必要に応じて行う検査

 

【便検査】

寄生虫の有無、消化状態、炎症や出血を疑う所見、必要に応じて細菌性腸炎の可能性などを確認します。若い犬、繰り返す下痢、血便や粘液便がある場合は特に重要です。

 

【血液検査】

炎症の程度、脱水、肝臓・腎臓・膵臓の数値、蛋白やアルブミンの低下がないかを確認します。元気そうに見えても、下痢が長引いている場合、体重が減っている場合、血便や嘔吐を伴う場合は、血液検査まで見た方がよいことがあります。

 

【レントゲン・超音波検査】

異物、腸の動き、腸管の拡張、腹部臓器の異常などを確認します。嘔吐がある、お腹を痛がる、誤食が疑われる、腹部が張っているといった場合に検討します。

 

〇 治療は状態に合わせて変わります

軽い胃腸炎であれば、整腸剤、消化器用フード、吐き気止め、必要に応じた点滴などで改善することがあります。

 

一方で、すべての下痢に抗生剤が必要なわけではありません。便の状態、発熱、血液検査、全身状態を見ながら判断します。寄生虫、膵炎、異物、慢性的な腸の病気などが疑われる場合は、それぞれ治療方針が変わります。

 

〇 ご自宅で見ておいてほしいこと

下痢をしたときは、以下を確認しておくと診察がスムーズです。

 

・下痢の回数
・便の色
・血液や粘液の有無
・嘔吐の有無
・食欲の変化
・水は飲めているか
・元気はあるか
・いつもと違うものを食べていないか
・祈りのポーズのような腹痛サインがないか

 

便の写真はとても参考になります。可能であれば、便を少量持参してください。

 

〇 まとめ

犬の下痢は、軽い胃腸炎で自然に落ち着くこともあります。

ただし、血便、嘔吐、食欲不振、元気消失、腹痛サイン、子犬・高齢犬、下痢が続く場合は、早めに確認した方がよい症状です。特に、前足を伸ばして胸を下げ、お尻を上げるような「祈りのポーズ」を繰り返す場合は、お腹の痛みを示していることがあります。

 下痢は、便だけで判断するのではなく、全身状態と経過をあわせて見ることが大切です。

迷う場合は、便の写真や経過を記録してご相談ください。