水中運動で足腰にやさしくフィットネス~プールと水中トレッドミルの使い分け~

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水中運動で足腰にやさしくフィットネス~プールと水中トレッドミルの使い分け~

シニア期に入ると、散歩の距離が短くなったり、立ち上がりに時間がかかったり、後ろ足の筋肉が少しずつ落ちてきたりすることがあります。

太り気味の子が体重を落としていくには、食事管理だけでなく運動も必要です。ただし、体重がある状態で長く歩かせると、膝や股関節、腰に負担がかかることがあります。

足腰のため、ダイエットのために散歩を増やしたいけれど、長い散歩ではかえって疲れてしまう。そういう子では、運動の量だけでなく、運動のさせ方を考える必要があります。

そういうときに選択肢になるのが、水中での運動です。

当院では、陸上での運動に加えて、体調や目的に合わせてプールや水中トレッドミルを使ったフィットネスを行っています。

水中運動は、単に泳がせる、歩かせるというものではありません。水の浮力や抵抗を利用しながら、関節への負担を抑えつつ、筋肉を使う運動として考えます。 


〇 水中運動は足腰への負担を抑えやすい運動です

水の中では、浮力が働きます。

陸上では体重がそのまま足腰にかかりますが、水中では水に体を支えられるため、関節への負担を抑えながら体を動かせる場合があります。

一方で、水の抵抗があるため、ゆっくりした動きでも筋肉を使います。そのため、長い距離を歩かせなくても、短い時間でしっかり体を使う運動になりやすいのが水中運動の特徴です。

シニアの子や太り気味の子では、この点が大きなメリットになります。

長い散歩では、歩くたびに膝、股関節、腰に負担がかかります。特に関節炎がある子、後ろ足の筋肉が落ちている子、体重が増えている子では、散歩の距離を伸ばすだけではうまくいかないことがあります。

水中では、足腰への負担を抑えながら、カロリー消費や筋肉への刺激を得やすくなります。長く歩かせるのではなく、負担を調整しながら運動する。そのための方法として、水中運動を使うことがあります。


〇 プールでできること

プールでの運動は、体全体を使いやすい運動です。

水の中で体を支えながら、前肢、後肢、体幹を使って動きます。普段の散歩とは違う形で全身を使うため、運動不足の改善や体力づくりに向く子もいます。

陸上で長い距離を歩かなくても、一定の範囲の中で運動を続けられる点もプールの特徴です。広い場所を走らせる必要がなく、体の状態を見ながら運動量を調整しやすくなります。

水の抵抗を受けながら動くため、短い時間でも全身を使いやすく、シニア期の筋肉維持や太り気味の子のフィットネスにも利用しやすい方法です。

ただし、泳ぐことがすべての子に合うわけではありません。水が苦手な子、呼吸が苦しくなりやすい子、心臓に不安がある子、短頭種、皮膚や耳の状態が悪い子では、慎重に判断します。無理に泳がせるのではなく、まず水に慣れるところから見ることもあります。


〇 水中トレッドミルでできること

水中トレッドミルは、水を入れた装置の中で歩く運動です。床がゆっくり動くため、その場で歩行練習ができます。速度を調整できるので、ゆっくり歩くところから始められます。

プールと違い、水中トレッドミルでは歩き方を見やすいという特徴があります。足の運び、歩幅、左右差、体の傾きなどを確認しながら進められます。また、水の深さを変えることで、体への負担を調整できます。

水位が浅ければ、陸上に近い負荷で歩く形になります。水位を上げると、浮力が増えて足腰への負担を軽くできます。

水の抵抗を受けながら歩くため、ただ歩くだけよりも体を意識して使いやすくなります。長い散歩では疲れやすい子でも、水位や速度を調整することで、歩く運動の質を上げやすくなります。

後ろ足の筋肉を維持したい子、歩き方を確認しながら運動したい子、太り気味で陸上の運動が負担になりやすい子では、よい選択肢になることがあります。


〇 プールと水中トレッドミルは目的が少し違います

プールと水中トレッドミルは、どちらが上というものではありません。

プールは、全身を使った運動に向いています。体力づくり、運動不足の改善、減量目的の運動などで使いやすい面があります。

水中トレッドミルは、歩く運動を見ながら調整しやすい方法です。歩行の確認、後肢の使い方、左右差、体重のかけ方を見たい場合に向いています。

同じシニア犬でも、体力をつけたい子と、歩き方を整えたい子では内容が変わります。太り気味の子でも、まずは水中で歩く方が合う子もいれば、プールで全身を動かす方が合う子もいます。

その子の年齢、体重、性格、関節の状態、心臓や呼吸の状態を見ながら選びます。


〇 陸上での運動も組み合わせます

水中運動は有効な選択肢ですが、それだけで完結するわけではありません。

普段の生活は陸上です。立ち上がる、歩く、方向転換する、段差を越える、姿勢を保つ。こうした動きは、陸上での体の使い方も関係します。

そのため、当院では陸上での運動も組み合わせます。

・立つ練習。
・体重移動の練習。
・ゆっくり歩く練習。
・バランス練習。
・関節の動きを保つ運動。
・自宅でできる運動の確認。

水中で負担を減らしながら動かすこと。陸上で生活動作につなげること。どちらか一方ではなく、体の状態に合わせて組み合わせていきます。


〇 1回で大きく変わるものではありません

水中運動やフィットネスは、1回で劇的に変わるものではありません。初回でも、歩き方の癖や苦手な動きが見えてくることはあります。ただ、筋肉を維持したり、体重を管理したり、歩き方を整えたりするには、ある程度の継続が必要です。

週に1回でも、体調に合わせて続けることで、運動のリズムを作りやすくなります。

もちろん、病院での運動だけでなく、ご自宅での散歩、食事管理、床の滑り対策なども大事です。太り気味の子では、運動だけで急に体重が落ちるわけではないため、食事管理と組み合わせて考えます。

疲れるまで運動する必要はありません。その日の体調、疲れ方、痛みの出方を見ながら調整します。


〇 注意が必要な子もいます

水中運動は、すべての子に向いているわけではありません。水が苦手な子では、強いストレスになることがあります。心臓病や呼吸器の病気がある子では、水中での運動が負担になることがあります。短頭種では、呼吸の状態に注意が必要です。

皮膚や耳の状態が悪い子も、内容を慎重に考えます。外耳炎や皮膚炎がある場合、水に入ることで悪化しないかを確認します。

手術後の子では、傷の状態や骨・関節の回復具合を見てから判断します。運動した方がよい時期なのか、まだ負担をかけない方がよい時期なのかを確認する必要があります。

水中運動は、ただ水に入ればよいというものではありません。安全に行える状態かどうかを見たうえで始めます。


〇 こんな子は相談の目安です

次のような変化がある場合は、水中運動やフィットネスを考えるきっかけになります。

・シニア期に入り、後ろ足の筋肉が落ちてきた。
・立ち上がりに時間がかかる。
・散歩の距離が短くなった。
・長い散歩のあとに疲れや痛みが出る。
・太り気味で、陸上の運動が負担になりやすい。
・膝や腰に不安がある。
・床で滑りやすくなった。
・運動不足を改善したい。
・筋肉を維持したい。
・無理なく体を動かす習慣を作りたい。

ただし、急に歩けなくなった、強い痛みがある、足を引きずる、呼吸が苦しそう、元気や食欲が落ちている場合は、まず診察で原因を確認します。フィットネスは、病気の確認を飛ばして行うものではありません。


〇 まとめ

水中運動は、シニア期の筋肉維持や、太り気味の子の体重管理、運動不足の改善に役立つことがあります。

長い散歩が負担になる子でも、プールや水中トレッドミルを使うことで、足腰への負担を抑えながら運動できる場合があります。

プールは全身を使った運動に向いています。水中トレッドミルは、歩き方を見ながら水位や速度を調整しやすい方法です。

どちらを使うかは、その子の体調、性格、目的によって変わります。

1回で大きく変わるものではありませんが、無理のない範囲で続けることで、体を動かす習慣を作りやすくなります。シニア期の足腰、体重、筋肉の変化が気になる場合は、陸上での運動と水中運動を組み合わせながら、その子に合った方法を考えていきます。