今週は少し変わって ~最近の動物関連トピックス~

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今週は少し変わって ~最近の動物関連トピックス~

いつもは犬、猫、エキゾチック動物の病気や診療について、ひとつのテーマを取り上げています。9月は今週で5週目ということもあり、今回は少し趣向を変えて、最近気になった動物関連の話題をいくつか紹介してみようと思います。

 

〇 犬の「寿命を延ばす薬」が開発中?

 

少し前から話題になっているのが、アメリカのLoyalという会社が開発している、犬の寿命や健康に過ごせる期間を延ばすことを目指した薬です。

 

現在いくつかの薬が開発されていて、そのひとつLOY-002は、10歳以上のシニア犬を対象とした1日1回の内服薬です。年齢とともに起こる代謝の変化に働きかけ、健康に過ごせる期間を延ばすことを目指しています。

 

この薬については、FDA(アメリカで医薬品などの安全性や有効性を審査する公的機関)による審査も進んでいます。現在は1,300頭以上の犬が参加する臨床試験が行われ、薬を飲んだ犬と飲んでいない犬で、寿命や健康状態に違いが出るのかを調べています。

 

さらに今年9月には、大型犬や超大型犬を対象とした別の薬LOY-003についても、FDAから「効果が期待できると考えるだけの根拠がある」という段階の評価を受けたことが発表されました。

 

大型犬は小型犬に比べて寿命が短い傾向があります。その背景のひとつとして、成長や体の大きさに関係するホルモンの仕組みが研究されています。こうした仕組みに働きかけることで、加齢に伴う変化を遅らせられないか、という考え方です。

 

ただし、「犬の寿命を延ばす薬が完成した」という段階ではありません。現時点ではまだ開発中で、寿命を延ばす薬として正式に承認され、一般の動物病院で使えるようになったわけではありません。

 

それでも、病気になってから治療するだけではなく、加齢そのものの仕組みに働きかけて、できるだけ元気に過ごせる時間を延ばそうという研究が進んでいるのは興味深いところです。

 

〇 100年以上ぶりに新しい野生猫が報告されました

猫の話題では、9月にボリビアから新しい野生のネコ科動物が報告されました。

 

名前は「Leopardus tilcayo(レオパルドゥス・ティルカヨ)」。

 

南米に生息するタイガーキャットと呼ばれる、小型の野生猫の仲間です。研究チームが遺伝子を詳しく調べたところ、これまで同じ仲間として扱われていた野生猫の中に、遺伝的に異なるグループがあることが分かりました。そのひとつが、新しい種として名前を付けられました。

 

体長は約45cm、体重は1.4kgほどとされ、一般的な家猫よりかなり小さな猫です。薄い茶色の毛に斑点模様があり、ボリビアのユンガス地方にある雲霧林に生息しています。

雲霧林とは、標高が高く霧が発生しやすい、湿った森林のことです。名前の通り、雲や霧に包まれることが多い環境です。

 

面白いのは、突然どこかで見つかった未知の動物というわけではないことです。現地では以前からその存在が知られていましたが、見た目だけでは近縁の野生猫との区別が難しく、遺伝子を調べることで別の種であることが分かりました。

 

生きているネコ科の動物が新しい種として命名されるのは100年以上ぶりと報じられています。

 

一方で、生息する森林では伐採や農地化、火災なども問題になっています。新しい動物が見つかった、というだけではなく、その動物が暮らせる環境をどう残すかという話にもつながります。

 

身近な猫とはかなり離れた話ですが、猫の仲間でも、まだ分かっていないことが残っているというのは面白いところです。

 

〇 ウサギをタオルで包んでCT検査?

 

エキゾチック動物では、ウサギのCT検査について少し変わった研究が発表されました。

CTは、体の中を細かな断面画像にして見ることができる検査です。人の医療でもよく使われています。

 

きれいな画像を撮るためには検査中に動かないことが大切なので、動物では鎮静や全身麻酔を使うことがあります。

ウサギを診察するときには、タオルで体を包んで保定する方法があります。海外では、その見た目から「Bunny Burrito(バニーブリトー)」とも呼ばれています。

今回の研究では、この方法でウサギを包み、鎮静や全身麻酔をかけずに頭部のCT撮影ができるかが調べられました。

 

93頭のウサギのCT検査を調べた研究で、タオルで包んだ36頭では、約9割で撮影の邪魔になるような動きがみられませんでした。検査中や検査後24時間までに大きな問題も報告されていません。

 

ウサギでは、鎮静や麻酔そのものが体への負担になることがあります。そのため、検査内容や性格によっては、薬を使わずに必要な画像が撮れる方法が増えることには意味があります。

 

もちろん、すべてのウサギをタオルで包めばCTが撮れる、という話ではありません。今回の研究は主に頭部のCTについてのもので、強く嫌がる子ではかえってストレスになることも考えなければいけません。

 

麻酔を使う、使わないのどちらかではなく、その子の性格や検査する場所、必要な画像に合わせて方法を選ぶ。エキゾチック動物の診療らしい研究だと思います。

 

〇 爬虫類・両生類とサルモネラの新しい報告

 

もうひとつ、エキゾチック動物からの話題です。9月に、香港のエキゾチックペットの流通に関わる爬虫類や両生類を調べた研究が発表されました。香港は世界的にもエキゾチックペットの流通が盛んな地域のひとつです。

 

160を超える検体を調べたところ、約55%から生きたサルモネラが確認されました。そのうち多くでは、少なくとも一部の抗菌薬が効きにくい性質を持つサルモネラが見つかっています。

 

数字だけを見ると少し怖く感じますが、この研究は特定の流通環境を調べたものです。日本で飼育されている爬虫類や両生類の半分以上が同じ状態だ、という意味ではありません。

また、カメ、トカゲ、ヘビなどの爬虫類が、見た目には健康でもサルモネラを持っていること自体は以前から知られています。

 

そのため、元気そうだから衛生管理は必要ない、というわけではありません。動物を触ったあとは手を洗う。飼育用品を人の食器と一緒に扱わない。小さな子どもや高齢者、免疫力が低下している方がいる家庭では特に気をつける。特別に怖がる必要はありませんが、こうした基本的なことを知ったうえで一緒に暮らすことが大切です。

 

〇 今回は少し違った話をしてみました

 

犬の寿命を延ばすことを目指した薬が研究され、新しい野生猫が報告され、ウサギでは麻酔を使わずにCTを撮影する方法が検討されています。

 

一方で、爬虫類や両生類と人が一緒に暮らすうえでの衛生管理についても、新しい研究が続いています。

 

普段の診察では、目の前の犬や猫、エキゾチック動物の症状をどうするかが中心です。その一方で、新しい薬や検査方法、動物そのものについての研究も少しずつ進んでいます。

 

今月のように5週目があるときには、ときどきこうした最近の動物関連の話題も紹介していこうと思います。