動物病院の酸素室って何をするところ?~呼吸が苦しいときに使う設備~

NEWS

ホーム » 院長コラム » 動物病院の酸素室って何をするところ?~呼吸が苦しいときに使う設備~

動物病院の酸素室って何をするところ?~呼吸が苦しいときに使う設備~

動物病院には、普段の診察ではあまり目にすることのない設備があります。

そのひとつが酸素室です。

呼吸が苦しそうな犬や猫が来院したとき、すぐにレントゲンを撮ったり、血液検査をしたりするとは限りません。

呼吸がかなり苦しい状態では、抱き上げる、押さえる、採血するというだけでも負担になることがあります。

そういうときには、まず酸素の多い環境で休ませ、少し呼吸が落ち着くのを待つことがあります。

〇 酸素室はどんな設備?

私たちが普段吸っている空気には、約21%の酸素が含まれています。

酸素室や酸素BOXでは、それよりも酸素濃度の高い環境を作ることができます。

肺や心臓の病気などで、体に十分な酸素を取り込みにくくなっている子にとっては、周りの酸素を増やすことで呼吸の負担を減らせることがあります。犬や猫では、肺炎、心不全による肺水腫、胸水、気道の病気などで使うことがあります。

ただし、「呼吸が速いからとりあえず酸素室」というわけではありません。呼吸が速い原因は、肺や心臓だけではなく、痛み、発熱、貧血、興奮などいろいろあります。まず呼吸の仕方や全身状態を見ながら、酸素が必要な状態かを判断します。

〇 検査より先に酸素を使うことがあります

呼吸が苦しい子を診察すると、「原因を調べるために早くレントゲンを撮った方がよいのでは」と思われるかもしれません。もちろん原因を調べることは大切です。

ただ、呼吸状態がかなり悪い子では、検査のために体勢を変えたり、押さえたりすることで、さらに苦しくなることがあります。

特に猫では、強く緊張すると呼吸状態が急に悪くなることがあります。そのため、来院した時点で呼吸がかなり苦しそうであれば、まず酸素室や酸素BOXに入り、できるだけ触らずに様子を見ることがあります。

呼吸が少し落ち着いてから聴診をする。採血をする。レントゲンを撮る。

急いで検査することより、まず安全に検査できる状態にする方を優先する場合があります。

〇 酸素室の中では呼吸の様子を見ています

酸素室に入っている間も、ただ休ませているわけではありません。呼吸数がどう変わっているか、胸やお腹を大きく使って呼吸していないか、口を開けて呼吸していないか、どのような姿勢をとっているかなどを見ます。

呼吸が苦しい動物は、楽に息ができる姿勢を自分でとることがあります。

首を伸ばす、前足を少し広げる、伏せずに座ったままでいる、といった姿勢が見られることもあります。

猫で口を開けたまま呼吸している場合や、舌や歯ぐきの色が青紫色に見える場合は、かなり呼吸が苦しい状態を考えます。

反対に、酸素室に入ってしばらくすると呼吸数が下がり、体の力が抜けて落ち着いてくる子もいます。そうした変化を見ながら、次にどの検査や治療を行うかを考えます。

〇 酸素は濃ければ濃いほどよい?

酸素室というと、「酸素をできるだけたくさん入れた方がよい」と思われるかもしれません。実際には、酸素濃度だけを上げればよいわけではありません。

酸素室の中では、温度や湿度、空気の入れ替わりも大切です。密閉された空間では、動物自身の体温で室温が上がったり、吐いた息によって二酸化炭素がたまったりすることがあります。特に呼吸が苦しい子にとって、室温が上がりすぎることは負担になります。

そのため、酸素を送るだけではなく、中の環境を見ながら調整して使います。

また、酸素室は原因そのものを治す設備ではありません。

肺炎であれば肺炎への治療、心不全であれば心臓への治療、胸水がたまっていれば必要に応じて胸水を抜く処置など、原因に対する治療を一緒に行います。

酸素室は、その治療を行うための時間を作ったり、呼吸の負担を減らしたりするために使う設備です。

〇 犬や猫以外でも使います

酸素BOXは、犬や猫だけに使うものではありません。当院では、体の小さな動物で酸素が必要な場合にも使用することがあります。

小さな子猫やエキゾチック動物では、マスクを当てたり、鼻にチューブを入れたりすること自体が大きなストレスになる場合があります。そうした動物では、BOXの中に入ってもらい、できるだけ触らずに酸素を吸ってもらえることが利点になります。

特にエキゾチック動物は、体調が悪くても捕まえようとすると逃げようとしたり、急に動いたりすることがあります。呼吸が悪い状態で何度も捕まえることは、それだけでかなり体力を使います。

まず静かな環境で落ち着かせるということも、治療のひとつになります。

〇 酸素室に入ったら重症?

「酸素室に入りましょう」と言われると、かなり重症なのではないかと心配になるかもしれません。実際に重い呼吸器疾患や心疾患で使うこともあります。

一方で、これ以上呼吸状態を悪くしないために、検査の前後に一時的に使うこともあります。少し酸素下で休ませてからレントゲンを撮る。処置が終わったあとに呼吸が落ち着くまで入ってもらう、そのような使い方もあります。

大切なのは「酸素室に入ったかどうか」だけではなく、なぜ酸素が必要だったのか、入ったあとに呼吸がどう変わったのかです。

〇 ご自宅で見てほしい呼吸の変化

呼吸の異常は、病院に来たときには緊張で分かりにくくなることもあります。

ご自宅で次のような変化があれば、動画を撮れる範囲で残しておくと診察の参考になります。

・寝ているのに呼吸がいつもより速い。
・胸だけでなくお腹まで大きく動かして呼吸している。
・首を伸ばして呼吸している。
・横にならず、座ったままでいる。
・犬で咳が増えている。
・猫が口を開けて呼吸している。
・舌や歯ぐきの色がいつもと違う。
・少し動いただけで息が上がる。

ただし、呼吸が明らかに苦しそうなときは、動画を撮ることを優先する必要はありません。

できるだけ興奮させず、そのまま受診してください。

〇 まとめ

酸素室や酸素BOXは、呼吸が苦しい動物に酸素の多い環境を作り、呼吸の負担を減らすために使う設備です。

肺炎や心臓病などで使うことがありますが、犬や猫だけでなく、小さな動物で使用することもあります。呼吸状態が悪い場合には、すぐに検査をするより、まず酸素の中で休んでもらうことがあります。

原因を調べることはもちろん大切ですが、その検査を安全に行える状態にすることも同じくらい大切です。酸素室の中で呼吸が落ち着くのを見ながら、その後の検査や治療につなげていきます。