犬が咳をする~様子を見てよい咳と受診したいサイン~
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犬が咳をする~様子を見てよい咳と受診したいサイン~
10月に入り、朝晩は少し涼しくなってきました。
犬が咳をすると、季節の変わり目だからかな、少しむせただけかな、と様子を見ることもあると思います。実際、興奮したときや水を飲んだあとに一度だけ咳き込み、その後は何事もなかったように過ごしていることもあります。
一方で、咳が何日も続く、夜や明け方にも出る、散歩中に咳き込むようになったという場合は、気管や肺、心臓などに原因がないか確認した方がよいことがあります。
診察では、「どんな音だったか」が分かるだけでもかなり参考になります。病院では咳が出ないことも多いため、ご自宅で動画が撮れそうなら残しておいてください。
〇 本当に「咳」なのかを確認します
飼い主さんから「咳をしています」と聞いても、動画を見ると咳ではなかった、ということがあります。
犬では、咳のほかに、吐きそうにえずく動きや、逆くしゃみと呼ばれる動きがあります。
咳では、「ケホッ」「ガッガッ」というように息を吐き出し、最後に何かを吐き出すような動きをすることがあります。咳の最後にえずくため、吐いているように見える子もいます。
逆くしゃみでは、反対に鼻から勢いよく空気を吸い込みます。首を伸ばし、「ズーズー」「フガフガ」と連続するため、初めて見ると呼吸が止まりそうに感じることもあります。多くは短時間で治まりますが、頻繁に繰り返す場合は鼻や喉の状態を確認します。
嘔吐の場合は、お腹に力が入り、実際に食べ物や液体を吐くことがあります。
文章だけでは区別しにくいので、動画があると診察が進めやすくなります。
〇 1回咳をしただけなら?
水を勢いよく飲んだあとや、食事の途中、強く興奮したあとなどに一度だけ咳き込むことはあります。
その後すぐ普段通りに戻り、食欲も元気もあり、呼吸もいつもと変わらないのであれば、少し様子を見られることもあります。
ただし、一度は軽く見えても、毎日のように繰り返すようになった場合は話が変わります。
最初は1日に1回だったものが、数日後には何度も出るようになった。散歩のときだけだった咳が、家の中でも出るようになった。こうした変化があれば、回数が少なくても診察の目安になります。
〇 咳の原因はひとつではありません
犬の咳では、気管や気管支、肺の病気をまず考えます。
感染や炎症による気管支炎では、乾いた咳が続くことがあります。ほかの犬と接触する機会が多い子では、いわゆるケンネルコフと呼ばれる犬の呼吸器感染症もあります。
小型犬では、気管がつぶれやすくなる気管虚脱もよくみられます。興奮したとき、散歩で引っ張ったとき、暑いときなどに咳が出やすく、「ガーガー」と特徴的な音になる子もいます。
肺炎では、咳だけでなく、元気や食欲の低下、発熱、呼吸が速いといった変化が出ることがあります。異物を吸い込んだ場合や、喉や気管に刺激がある場合にも咳は出ます。
同じ咳に見えても、原因によって治療は変わります。
〇 心臓の病気でも咳は出ます
中高齢の犬で咳が続くときには、心臓の状態も確認します。
特に小型犬では、年齢とともに心臓の弁に変化が起こる僧帽弁閉鎖不全症が増えてきます。ただし、「咳をしている=心臓病」とは限りません。
心臓が大きくなって気管支を圧迫して咳につながることもありますし、心不全が進んで肺に水がたまると、咳だけではなく呼吸数の増加や呼吸の苦しさが目立ってきます。
反対に、心雑音がある犬が咳をしていても、原因は気管支や気管虚脱だったということもあります。
そのため、咳の有無だけではなく、聴診、呼吸状態、レントゲンなどを合わせて見ます。
〇 夜や散歩のときだけ咳をする場合もあります
「病院では咳をしないんです」と言われることは珍しくありません。
家では夜に出る。朝起きたときに出る。散歩に出ると咳き込む。興奮して吠えたあとに出る。抱き上げたときに出る。
いつ咳が出るかも、原因を考える手がかりになります。
気管が刺激されると出やすい咳では、首輪で引っ張ったときや興奮時に増えることがあります。
一方、心臓や肺の状態が悪くなっている場合には、咳だけでなく、以前より散歩を嫌がる、途中で止まる、疲れやすい、寝ているときの呼吸が速いといった変化が一緒に出ることがあります。
咳だけを見るのではなく、普段の動き方や呼吸も見ておいてください。
〇 呼吸が苦しそうな場合は咳よりも優先します
咳が出ていても、元気に歩き回り、食欲もあり、呼吸が落ち着いている子と、じっとしていても呼吸が速い子では緊急性が違います。
・安静にしていても呼吸が速い。
・お腹を大きく動かして呼吸している。
・首を伸ばして呼吸する。
・横になれず座ったままでいる。
・舌や歯ぐきの色が青紫色、またはいつもより白い。
・ぐったりしている。
・咳と一緒に失神する。
このような様子がある場合は、咳そのものより呼吸状態を優先して考えます。
ご自宅では、寝ているときや完全に休んでいるときの呼吸数を数えておくのも参考になります。胸が上がって下がる動きを1回として、1分間に何回呼吸しているかを見ます。
普段の回数を知っておくと、「いつもより明らかに速い」という変化にも気づきやすくなります。
〇 診察では何を見る?
まず、いつから咳をしているのか、1日に何回くらい出るのか、どんな場面で出るのかを聞きます。
食欲、元気、発熱、鼻水、散歩での疲れ方、ほかの犬との接触なども確認します。
聴診では、心雑音がないか、肺や気管支から異常な音が聞こえないかを見ます。喉や気管への刺激で咳が出るか確認することもあります。
レントゲン検査では、気管の太さ、気管支や肺の状態、心臓の大きさなどを確認します。肺炎がないか、心臓が大きくなっていないか、気管が狭くなっていないかを見るためにも使います。
状態によっては血液検査を行い、炎症や感染を疑う変化、全身状態を確認します。
咳だけで病名を決めるのではなく、年齢、犬種、咳の出方、診察や検査の結果を合わせて判断します。
〇 ご自宅で見ておいてほしいこと
受診前に分かる範囲で構いませんので、次のようなことを見ておいてください。
・いつから咳をしているか。
・1日に何回くらい出るか。
・乾いた咳か、痰が絡むような咳か。
・夜、朝、散歩中、興奮時など、出やすい時間があるか。
・咳のあとにえずくか。
・鼻水があるか。
・食欲や元気は変わっていないか。
・以前より疲れやすくなっていないか。
・寝ているときの呼吸が速くないか。
・ほかの犬と接触する機会があったか。
そして、できれば咳をしている様子を動画で撮っておいてください。
数秒の動画でも、咳なのか、逆くしゃみなのか、えずきなのかを判断する材料になります。
〇 まとめ
犬の咳は、一度むせただけで終わることもあれば、気管や気管支、肺、心臓などの病気が関係していることもあります。
1回だけ咳をして、その後いつも通りであれば経過を見られることもありますが、何日も続く、回数が増える、散歩で疲れやすくなる、呼吸が速くなる場合は、一度確認した方がよいでしょう。
特に、じっとしていても呼吸が苦しそう、舌の色がおかしい、横になれない、ぐったりしている場合は、咳の回数にかかわらず早めの受診が必要です。
咳は診察室では出ないこともあります。どんな音で、いつ出ているのか。ご自宅で撮った動画や普段の呼吸の様子が、診察ではとても役に立ちます。