犬が吐く・食欲がない~夏の疲れだけで済ませないサイン~

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犬が吐く・食欲がない~夏の疲れだけで済ませないサイン~

8月の終わりから9月にかけて、犬の嘔吐や食欲不振の相談が増えることがあります。暑さが続いたあとで、少し食欲が落ちる、朝だけ吐く、いつものフードを残す、という形で気づかれることもあります。

 

夏の疲れかな、食べムラかな、と見えることもありますが、吐く、食べない、元気がないという変化には、胃腸だけでなく体の中の病気が隠れていることがあります。

 

診察では、吐いた回数や内容、食欲の落ち方、腹痛の有無、体重の変化、脱水の程度を見ます。実際に触ってみると、お腹をかばっていたり、発熱があったり、思ったより脱水していたりすることもあります。

 

1回吐いただけで、その後は元気も食欲もある場合は、大きな問題ではないこともあります。ただ、吐き気が続く、食べない、ぐったりしている、腹痛がある場合は、早めに状態を確認した方がよいでしょう。

 

〇 嘔吐と食欲不振は軽く見えやすい症状です

 

犬は、胃の中に何もない時間が長いと胃液を吐くことがあります。食べ過ぎ、急なフード変更、おやつ、拾い食いなどで一時的に吐くこともあります。

 

その一方で、同じように吐いているように見えても、胃腸炎、膵炎、異物、腎臓や肝臓の病気、子宮の病気などが関係していることもあります。

 

吐いたあとに元気があるか。水は飲めるか。食欲は戻るか。お腹を痛がらないか。ここが大事です。吐く症状そのものより、その後の様子を合わせて見る必要があります。

 

〇 夏の終わりは胃腸に負担が出ることがあります

 

暑い時期は、散歩時間が変わったり、運動量が落ちたり、冷房の環境で過ごす時間が長くなったりします。食欲にムラが出る子もいます。また、暑さで水を飲む量が変わったり、食べる量が落ちたりすると、胃腸の動きも乱れやすくなります。

 

夏場は、人の食べ物やおやつ、冷たいもの、脂っこいものがきっかけになることもあります。少量でも、その子によっては胃腸に負担がかかります。

ただし、夏の疲れや食べムラだけで説明できるかは、実際の状態を見ないと分かりません。嘔吐が続く、食欲が戻らない、元気が落ちる場合は、別の原因も考えます。

 

〇 注意したいサイン

 

吐いていても、その後に普通に食べて元気がある場合は、少し様子を見られることもあります。ただ、次のような様子がある場合は注意します。

 

・何度も吐く。
・水を飲んでも吐く。
・食欲がない。
・ぐったりしている。
・お腹を痛がる。
・背中を丸める。
・前足を伸ばしてお尻を上げるような姿勢をとる。
・吐いたものに血が混じる。
・下痢や血便がある。
・お腹が張っている。
・発熱がある。
・高齢犬で急に食べなくなった。
・未避妊の雌犬で元気や食欲が落ちている。

 

特に、吐く、食べない、元気がない、腹痛がある、という組み合わせは軽く見ない方がよいです。

 

前足を伸ばしてお尻を上げるような姿勢は、いわゆる祈りのポーズと呼ばれることがあります。腹痛のサインとして見られることがあり、胃腸炎や膵炎、異物などを考えるきっかけになります。

 

〇 原因は胃腸だけとは限りません

 

犬が吐く、食べないというと、まず胃腸の不調を考えます。胃腸炎、食べ慣れないもの、拾い食い、フードやおやつの変更、異物、便秘、膵炎などはよく考える原因です。

 

ただし、胃腸以外の病気でも嘔吐や食欲不振は起こります。腎臓病、肝臓や胆のうの病気、ホルモンの病気、発熱を伴う感染や炎症、痛みなどでも食欲が落ちることがあります。

未避妊の雌犬では、子宮蓄膿症も考えます。陰部から膿が出ていない場合でも、元気や食欲が落ち、吐き気が出ることがあります。

 

高齢犬では、何となく食べない、少し吐くという入り口でも、体の中の変化が出ていることがあります。食欲だけでなく、体重、飲水量、尿の量、活動性も合わせて見ます。

 

〇 食べない時間にも注意します

 

少し食べムラがあるだけなら、すぐに大きな問題とは限りません。ただ、まったく食べない時間が長くなる場合は注意します。特に小型犬、子犬、高齢犬、持病のある犬では、食べないこと自体が体への負担になります。

 

いつもの半分くらいは食べるのか。好きなものなら食べるのか。水は飲めるのか。飲んでも吐かないのか。こうした違いで見方が変わります。

 

食欲はあるのに食べられない様子がある場合もあります。口の痛み、歯のトラブル、飲み込みにくさ、吐き気が強い場合などでは、食べたいけれど食べられないように見えることがあります。

 

食べない、吐く、よだれが多い、口を気にする、何度も飲み込み動作をする場合は、吐き気や口の中の問題も考えます。

 

〇 診察で確認していること

 

診察では、まず全身状態を確認します。体重、体温、脱水、歯ぐきの色、心拍、呼吸、お腹の張り、腹痛の有無を見ます。お腹を触ったときの反応、背中を丸める姿勢、歩き方や元気の程度も参考になります。

 

問診では、いつから吐いているか、何回吐いたか、吐いたものは何か、食欲はどのくらい落ちているかを確認します。下痢の有無、便の状態、尿の量、水を飲む量、拾い食いや異物の可能性、最近食べたものも大事です。

 

血液検査では、炎症、脱水、貧血、肝臓や腎臓の数値、電解質、血糖などを確認します。膵炎が疑われる場合は、膵臓に関連する検査を考えることもあります。

 

レントゲン検査では、胃腸のガス、異物を疑う所見、便のたまり具合、臓器の大きさなどを見ます。超音波検査では、胃腸、肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、膀胱、子宮などを確認します。

 

見た目だけでは、単純な胃腸炎なのか、他の病気が隠れているのか分からないことがあります。

 

〇 治療は状態に合わせて変わります

 

治療は、原因と全身状態によって変わります。軽い胃腸炎で、元気があり脱水も強くない場合は、吐き気止め、胃腸薬、食事の調整などで経過を見ることがあります。

 

吐き気が強い、脱水がある、食べられない状態が続く場合は、点滴や注射で状態を整えることを考えます。腹痛が強い場合は、痛みへの対応も必要です。

 

異物、膵炎、子宮蓄膿症、肝臓や胆のうの病気などが疑われる場合は、原因に合わせて治療方針が変わります。単に吐き気止めだけで様子を見ると、悪化してしまう病気もあります。

そのため、吐いている犬では、今吐き気を止めることと、なぜ吐いているのかを確認することの両方が大切です。

 

〇 ご自宅で見ておいてほしいこと

 

受診前に、家での様子を整理しておくと診察の参考になります。

 

・いつから吐いているか。
・何回吐いたか。
・吐いたものはフード、胃液、泡、血液、異物のどれに近いか。
・食欲は何割くらいか。
・水は飲めるか。
・水を飲んでも吐かないか。
・下痢や血便があるか。
・便は出ているか。
・お腹を痛がる様子があるか。
・拾い食いや誤食の可能性があるか。
・最近フードやおやつを変えたか。
・未避妊の雌犬では、陰部からの分泌物がないか。

 

吐いたものや便の写真があると分かりやすいことがあります。何を吐いたのか、血が混じっているのか、異物があるのかを確認しやすくなります。

 

以前の残り薬や人の胃薬を自己判断で使うのは避けてください。原因によっては、薬で一時的に症状が隠れてしまうことがあります。

 

〇 まとめ

 

夏の終わりは、犬の嘔吐や食欲不振の相談が増えることがあります。暑さや食べムラが関係することもありますが、吐く、食べない、元気がないという変化には、胃腸炎、膵炎、異物、内臓の病気、子宮の病気などが隠れていることがあります。

 

1回吐いただけで、その後元気に食べられる場合は軽く済むこともあります。ただ、何度も吐く、水を飲んでも吐く、食欲が戻らない、ぐったりしている、腹痛がある場合は注意が必要です。

 

病院に受診の際には吐いた回数、食欲、水を飲めるか、便や尿の様子、お腹の痛み具合などを伝えられる様にしておきましょう。